参観日2

先週、ニャコさん一年生最後の参観日がありました。

授業内容は「ひ・み・つ」だそうで、前日に「教えちゃおか?」と言われるも、「別にいい」と答え、特に気にしなかった母はノコノコと学校へ行きました。

校内へ入るのに機械での検温だとか消毒だとかで長蛇の列......。なかなかの警戒態勢です。

やっと校内へ入った頃にはあと五分で授業が始まる、という感じでした。

やでやで、と教室へ入るとニャコさんが早速母を発見してニタニタと手を振ります。そこからずっと手のひらに「人」という字を書いては飲み込み続けるニャコさん。

なんだ、何をそんなに緊張することがあるのだ?とちょっと嫌な予感がする母。

ずっと「人」を飲んでいる...。何のアピールかしら...怖い。

で、授業が始まりました。お題は「この一年間でできるようになったこと」でした。

コマが上手に回せるようになったよ、とか、縄跳びが上手くなったよ、とかの発表を前に出てきて実践するといった内容のものでした。

ニャコさんは一体どの部門で出てくるのでしょう。

どの部門も大体4、5人が出てきて一人ずつ発表する感じだったのです。

まあそれでも保護者がわんさか居る中で、数人でとはいえ前に出てきてコマを回したりするのは緊張しますわな。母は人前で何かをするということが死ぬほど嫌いなので、子供たちにただただ拍手をして尊敬の念を送ることしかできませんでしたよ。

しかしニャコさんがなかなか出て来ない。相変わらず「人」を飲んでいる...。何をしでかす気なのでしょう。

「作文がうまく書けるようになった、の人~~」

と呼ばれた瞬間、ニャコさんが立ち上がり飛び出して来ました。

え、一人?

何かもう嫌な予感が確信になった母。

「わたしは、作文がうまく書けるようになりました!その作文を読みます!『クッキーを作ったよ』」

「!!!!!!!」

この作文は!!!あの伝説の!学期末の保護者面談で先生に大ウケ(悪い意味で)のヤツじゃないか!?

「わたしはおかーさんと二人で初めてクッキーを作りました。卵を割って混ぜて.....云々かんぬん云々かんぬん....。食べた後におかーさんに聞きました。買ったクッキーと作ったクッキー、どっちがおいしい?と。するとおかーさんは『買った方がおいしい』と言いました。わたしは作ったクッキーも買ったクッキーもどっちもおいしいと思いました」

駄目なヤツじゃん...。

保護者~ズから失笑が聞こえます。

母は思わず古畑任三郎よろしく額を押さえてしまいました。人間って追い詰められるとこんな漫画みたいな動きをするのですね、先生。

ニャコさんは生き生きとはっきりと朗々と、すごく上手に発表しましたよ。

でも、どう聞いても母が『人でなし』にしか聞こえませんよ?

保護者面談でこの作文の話になった時に先生が「何てシビアな方だと思いましたよ」と大笑いしていましたけど...。

違うんです!確かにクッキーは作りましたけど、ほぼ全部母が作ったのであってクッキーのキットみたいなのでこれこれを混ぜて型に入れて焼けば出来上がり~みたいな簡単なやつやったんです!粉を量ってどうのこうのするような繊細な作り方のやつじゃなかったんです!だからお父さんと「あんなに手間暇かけてお金をかけて作ったわりには普通」という結論に至ったのであって、そりゃぁニャコさんが一から一生懸命作ったものであったなら母も「あんたが作ったクッキーは超美味しい!!」くらいは言っていた...はず、です。

...と面談時にも先生に熱く語った母です。

で、母に出来ることといえば、ニャコさんと親子関係にある、と思われないよう何気なく参観を続けることでした。「あれが、あの子のお母さんなのね...ふっ(人でなし)」と思われるのがツライ...。違うのに...そんな意味じゃないのに...。

でもあんなに素知らぬ顔をして頑張っていたのに授業が終わった瞬間「おかーさーん!」と嬉しそうにニャコさんに駆け寄って来られて、「お前、あたしを世間から抹殺する気か!?」と心の中で絶叫しました。

バレたな。あたしが「人でなし」と。

母とニャコさんに気づいた先生がやってきて、「あの作文ニャコさんのお気に入りで~」と素敵な笑みを残して去って行きました...。

本当に?どういう意味で?

ぐるぐると母の頭の中を疑問が巡りました。

この話を職場でしたら、「先に内容を聞いて『行かない』という選択肢があったんじゃ...」と爆笑の後冷静に言われました。ですよね...ごもっともですよ。

何故前日に「教えちゃおか」と言われて「別にいい」なんて言ってしまったのだろう。あの時の私にビンタしに行きたいくらいだわ。

夜、お父さんにも報告をしたら爆笑でした(←この人は無傷。何故だ。あの発言は二人でしたはずなのに)。

「あの作文、好きながよね~」

とニャコさんが改めて言っておりました、。

...ねぇ、どういう意味で?

中吉

相変わらず拡張された勉強机とニャコさんたちと寝ている(川の字で!)母です。

この呪縛から逃れるにはどうすればいいのでしょうか...。

さて、そうは言っても勉強机が広々と使えるようになったニャコさんの喜びようったら半端ありません。

「おかーさんっ、これ見て!」

と差し出された紙を見ると....。『おたのしみ会』との文字が。それも日付を見ると一週間のあいだ催されるようです。ニャコさんの喜びの大きさでしょうか。

どんだけ楽しまなければならないのだろう...。少し不安になりました。

百人一首(強制参加....)

四コマ漫画募集、二個作ってね(え?母が?)

・将棋

・ニャコのおてだま

・ニャコのあやとり

・ニャコの机、綺麗になった机(え、今さら披露されるのかしら...一緒に寝てるじゃん)

・おたのしみプレゼント、何が入っているかわからない

・歌って踊ろう、誰が選ばれるかな?(え?選ばれるんだ...)

etc...

......これってニャコさんがやりたいことリストじゃん。ニャコさん以外誰もやりたいと思わないラインナップに衝撃を受けた母。おたのしみ会ってこんなんでしたっけ?

そして、やってきました第一日目。

「おかーさんっ、これ引いて!」

るんるんでやってきて折り紙で作った箱に入ったくじを引けと言うニャコさん。仕事から帰ってきたばかりの玄関でいきなりのおたのしみ会開始です。

そうは言っても手を洗ってうがいもして服も着替えて...とやることがあるから、とくじを引くのを先延ばしにして色々と動いていた母。

が、ニャコさんはしぶとい。どこまでもついてくる!洗面所からトイレからリビングへと家庭内ストーカーです。

そしてご飯を食べ始めた母の横にそっとくじの入った箱を置き、じっと動きません。すでにお父さんとご飯を食べて終わっていたニャコさんにはもはややることなど残っていなかったのです(暇かっ)。

ご飯を食べながらやっと母はくじを引きました(母もよくここまで引っ張ったことよ)。

中古』とその紙に書いてありました。

「!?!?!?」

瞬間的に解ったけれどもその事実を信じたくなかった母は目を点にしておりました。

「見よう見まねが過ぎるわ!」

「え、何が?」←ニャコさんのきょとん顔ったら...

「悪かったねっ、古くって!中吉って書きたかったんやろうけど、違うで、これ中古でっ(喧嘩売っとるんかっ)」

遠くで聞いていたお父さんが爆笑しておりました(ちなみにお父さんは『大古』だったそうな)。

中古って何?(いまいちツッコミがはまらなかった理由はこれですな)と真顔で問われ、渋々説明をし、えへへへへ....となったニャコさんでした。

母の偉かった点は、「中古」を引き当てたことでしょうか。

 

まだまだおたのしみ会は続きます。 

乱雑

さて、前回の「お父さんとはもう二度と一緒に寝ない」宣言をしたニャコさんの続報です。

結局寝不足のまま登校したニャコさん。帰るなり、「やっぱりおかーさんと下で寝たいがよっ」と熱く熱く叫んだのでした。眠れないのがこんなに辛いとは!!みたいな様子です。夕飯を食べながらも合間に床で寝そべったり、宿題をやりながらもごろついたり、とその憔悴っぷりは気の毒なほど。

.......そんな様子を見ていた母には「あたしは一人で寝たいんじゃ!!!」と言う力は残されていなかった。すごすごと二階からニャコさんの布団一式を下ろし、母の布団(堂々と真ん中に敷いていた...)の隣にぐいぐいと並べたのでした。

(さようなら、たった一日だけの自由...)

「ごめんでー(てへっ)」

と、満面の笑みのニャコさん。

仕事から帰ってきたお父さんはその現状を見て、「たった一日だけやったか」と呟いたのでした(その顔は何だか嬉しそう←この人こそある意味自由になったのですよ!)。

余談ですが、職場の同僚は元旦那さんのイビキにムカついて、濡れた手拭いを顔にかけたそうな....。「すごい勢いで起きるで、けけけけけけ」と、試すように勧められたのだけれども、どうだろうか....母は怖くてやれないのだが。

イビキも呼吸も永遠に止まりそうな気がして怖いのだけれども、....どうだろうか。多分一緒に寝ていたらやってみただろうな、とは思うのです。嬉し恥ずかし新婚の、狭いマンションで居た頃、襖を隔てた隣から聞こえる怪獣のようなイビキに母は戦慄したものでした。

(あたし、発狂するかも!!!)

耳栓と、「夫より早く就寝する」という気合いと根性で乗り越えた日々を思い出した母です。そして、今の家に引っ越した瞬間から「ゆっくり寝ぇやー♥️」と仏のような顔で二階の部屋に追いやったのです(既に乳飲み子のニャコさんが居たけれども。三時間おきに起きなければならなかったけれども!一人でやりまっせ!)。

 

で、一日で舞い戻ってきて異常に早く就寝したニャコさん。暗闇の中後から布団に入った母の耳に入ってきたのは、「スカースカー」というそれはそれは心地よい寝息でしたとさ。

いやいや母的には全然めでたしめでたしではないけれど!?

冷静になって見てみると(暗闇ですが)、ニャコさんの勉強机プラス前日購入した棚(4つ!)の段ボールと一緒に寝る羽目になっているのです!

どうみても狭い和室に一人増えている状況です。

いやいやいやいや......おかしいっしょ。勉強机拡張の為に一人減らしたはずなのに、戻ってきてその上もう一人増えているって。あれ~~~?

 

.....という感じで一週間を過ごして一昨日の土曜日。

お父さんと母は気合いを入れて棚を組み立てました!完璧なる連携プレーでひたすら組み立て組み立て.....。

「あたしにできることがあったら....」とキャハキャハと明らかに足手まといでしかないニャコさんをバッタバッタとなぎ倒しながら完成した棚を勉強机にドッキングして、あーでもないこーでもない、と地震対策に勤しんでいたのですが、なかなか決まらず続きは明日、となりました。日曜日は母が仕事だったので、あとはお父さんにお任せ、です。ま、これ以上母の出番もないしね、と。

棚自体はすごくいいのです。しかし、これを重ねようとするとちょっと危ないかな、となったので(滑り止めマットだけでは心もとない)、棚同士をL字金具で固定するしかないんじゃない?と提案して出勤した母だったのですが....。

あらまぁ帰ってきてビックリ。

朝見た光景と何ら変わりない様子に母は絶句.....。なんなら机の上はごちゃごちゃとおもちゃ展示場(にしか見えない)。

「どーゆーことじゃい」

と、勢い声も低くなりますわい。

お父さんいわく、固定したところで高さ的に危ない気がして(だってその下で母子が寝ているのだから)。

....何ともお優しいお考えですなぁ(けっ)。

 

そして、勉強机プラス組み上がった棚4つ分(母の計算では人一人分以上)とニャコさんと母、という新体制での和室共同生活が始まったのです.....。

マジか....。

 

大胆なれ大胆なれ、と呟きながら母は色んなパターンを提案してきたのですが。

いっそ勉強机を二階に上げたら?(これが一番マシ)←これなら棚を重ねてもOKとお父さんからお返事があったのだが、ニャコさん的にはNG(一人で二階はイヤ)

母とニャコさんが二階で寝たら?(母の母からの至極まっとうな提案)←これが嫌だからこんなに考えているのではないか!(テレビも何もない部屋でいきなり九時に寝るのは母がイヤ)

結局、しばらくはこれでいくしかないんじゃない?と母は諦めの境地に達しつつあります。二晩ほど棚たちと過ごしていくうちにそれりに馴染んできたような気もするし(気のせい)。

何より安心しきって「スカースカー」と眠るニャコさんをこれ以上翻弄するのは悪い気もするし(多分翻弄されているのは母)。

........と自分を誤魔化し始めた(もう全部が面倒くさい)母です。

 

激怒

昨日からニャコさんはお父さんと新たに整えられた二階の一室で寝ることになりました。

母は諸手を挙げて送り出し(それはそれはいそいそと布団を運び、加湿器も設置←ウキウキが止まらない)、一階で一人寝を満喫しました。

お父さんも自分の部屋から出張してのニャコさんとの同部屋です。かつて、こんなことがあったでしょうか(いや、ない)。

夜中にトイレに起こされついていく、布団を蹴飛ばしてはいないだろうかと夜中に何度か確認する、挙げ句の果てには、死んではいないだろうかと確認する....なんてことお父さんは二階で寝てるからしたことないでしょうよ(決してディスっているわけでは...)。さあ、これからはその役目をあなたが背負うのです!あっはははははは!(高笑いも出るというもの)

それでも、ふと夜中に何度か目を覚ました母は「あの人眠れているのかしら.....」とニャコさんに思いを馳せたものでした(お父さんの心配は一ミリもナッシング)。

それが証拠に、寝ていると肩をグイと掴まれ「おかーさんっ」と揺すられた夢を見たりなんかもして...。もちろん、実際は誰も肩なんか掴んでなくて。

ちょっと怖くてお経を唱えたりなんかして(心配している割りにはお化け扱い)。

それでも一人寝は最高だわ!と思ったのでした。

 

何故こんな展開になったかというと...。

始まりは昨日の朝でした。ニャコさんはここのところずっと不満だったのです。勉強机にモノが溢れて片付けても片付けても勉強するところがない!と。ニャコさんの勉強机の用途は「絵を描く」です。宿題はリビングの机とかでやっているので問題なし(いや、逆だと思う)。

まあニャコさんの勉強机は母が大人になってから買ったオシャレ机(なんの収納もついていないような、でも広いみたいな)で、傍らに三段ボックス的なものを配置しているものなので、収納力に限界が近づいていることは明らかでした。

で、勉強机の拡張計画がお父さんと母の間で話し合われたのです。

この机に合う棚を探しに行こう!でも待って。棚を設置したらこの部屋は狭くなるよ?どうするよ?

となって、誰かがこの部屋を出て行くしかないじゃないか?となったのです。

以前ご報告したように(『恐怖』参照願います)、庭に面したうっすい壁の和室に、勉強机→母→ニャコさんと並んでいるのでこちらも部屋としての限界が来ているのです。

ちょっと転がればニャコさんのキャスター付き椅子に巻き込まれる母なのです。

母が二階に上がれば解決するのです、単純に考えれば(二階には母が以前使っていたベッドもあるし!)。この和室をニャコさん部屋にしたらいいのですから。

が、それはニャコさんが許さない。一人で一階で寝れるか!ってなもんである。

「おかーさんはわたしを守るためにここで寝ゆうがやないが!?私が襲われたらどうするが!?」

と、難癖をつけてくるのです(それはそれはもう必死)。

......守るために一緒に寝ているわけではない、あなたが一人で寝れんというから居るだけである。そもそも襲われるような事態に陥ったとき、多分母もどうにかなっていると思うし...。と、あーでもないこーでもないと攻防があった末、お父さんに白羽の矢が立ったのです(遅いよ)。

「お父さんと一緒に寝たらいいじゃん!勉強は一階でして。寝るときは二階に上がって。ね、お父さん!(有無は言わせぬ!)」

お父さんには断る力がなかった...。そして、勉強机を二階に持っていく力もなかった...。

 

で、二階の空き部屋を整え、棚を探す旅に出たお父さんと母。

ニャコさんは鼻歌ものでお留守番。一人で寝る恐怖から解き放たれたのでご機嫌です。ついでに勉強机も素敵になりそうだから興奮を隠せません。出掛けている間、何回ケータイに電話があったことか...。

「すごい机の上綺麗にしゆうきね。すぐに動かせるようにしちょったらいい?あはははは~」

このまま天に舞い上がるんじゃないかしら、と思えるほどの浮かれっぷり。

そんな浮かれとんちきを聞き流しながらお父さんと母は家具屋からホームセンターまで何軒理想の棚を求めてさ迷ったことでしょう。

一度お昼ご飯を食べに帰ってきてからのまた出掛ける、というハードスケジュール。

理想の棚の何と難しいことよ...。帯に短し襷に長し、ということわざが母の頭を駆け巡ります。

これとこれを組み合わせて...とやっと二人が納得できる棚が見つかりました。

長く重い段ボールをヒィヒィ言いながら車に積み、残念ながら組み立てねばならぬなぁ、今日の話にはならないなぁと言いながら帰っていると、またしてもニャコさんからの電話。

「遅いがやけど...。今どこにおるがー?」

おーまーえー!!小姑か!お前の為に頑張っとるんじゃ!

もう帰っている、と言うと、

「あと何分?え?二十分?じゃあ帰ってきたら棚できるね♥️」

おーまーえー!!鬼か!!こちとら一日仕事で疲れとるんじゃ!キー!!(心の中でビンタ)

親の心子知らず(ちょっと違うかしら)

 

そんなわけで、帰ってきたものの早く組み立ててほしいニャコさんとお父さんとの間で一悶着ありましたが、昨日は段ボールを和室に運び込んだだけで終わりました。

で、その後寝る時間がやってきました。母のお楽しみの時間です。前日まで、ニャコさんの睡眠の妨げになってはいけないと、彼女が布団に入った瞬間から電気を消し、テレビの音も消し、暗闇で息をひそめて生きてきた母にとって奇跡的な夜の始まりだったのです!

今まではテレビの音を消していたから必然的に字幕が出るドラマ(ほぼ外国もの)しか観れていなかったのだけれども、電気を煌々と点け音も大きく出して観ましたよ、録画しておいた金曜ロードショー『パラサイト~半地下の家』!

夜何もかも全開で観る映画としてのこれは素晴らしく良かった!最初っから最後まで一気に観れる喜びよ(灯火管制下では母にとっては一時間が限界である)。

るらららら~♪となりながら床についたのです。これで私は自由の身~♪と。

だがしかし!

こんな浮かれとんちきを神様は許してくれなかったようで。

今朝。

ニャコさんはいつもの起床時刻より三十分以上も早く起きてきたのですが、「おはよう」と言う間も無く彼女の怒りに満ちた表情が母を絶望の淵に追いやり始めたのです(あぁぁぁ、もしや)。

「うるさいがよ!!!!おとーさんのイビキが!!!一睡も出来んかった!何あれ!ずーーーっとガーガー言うてよ!早く六時にならんろうかとずーっと時計見よった!羊も数えてみたけど、全然寝れんかった!腹立つ!」

激ギレです。

寝不足でテンション上がったままだから口も滑らかに次から次へとお父さんのイビキのあれこれを糾弾するニャコさんに同情を禁じ得ない母。

(母は知っていたよ...。あのイビキの五月蝿さは発狂ものだということは...)

でもでも、ニャコさんなら気にならないだろう思っていたんだよ(子供だからさ)。

いびきがうるさいってあなたも常日頃から言ってたじゃん?、てへへ。

それを引っ括めての納得だと思っていたのだが...。

駄目だったんだね、やっぱり。...っていうか、夜中に母の肩を掴んだのは強ちお化けではなかったというわけでもなかったんだね(きっとあれはニャコさんの生き霊!!)

 

「おかーさん、戻ってきていい?」

「やだ、無理。棚が置けんなる」

「大丈夫」

「んなわけあるか」

「私は二度とおとーさんと寝ん」

「一人で寝たら?」

「おかーさんが好きやき戻りたい」(←駄メンズか)

「一泊千円」

「え、100円じゃダメ?」

........お金を払ってでも戻りたがるニャコさん。必死です。いやいや母もたった一日の自由じゃ嫌過ぎる。

さて、今夜はどうなるでしょうか。

答えの出ぬままニャコさんは渋々と登校していきました。お父さんはノーダメージです。

「えっ、寝れんかったが?」

...だそうです。 

抜歯

元旦からニャコさんが偉業を成し遂げました。

自分で歯を抜く、という偉業を...。

「歯がぐらぐらするがよー」と去年の十二月くらいからずっと言っていたのですが、確認したところでぐらぐらしているだけなので母は完全無視を続けておりました。

明らかに「これはイケる!」という場合にしか母は出動しません。

「全然抜ける状態じゃない」

と、言い聞かせておりました。

ニャコさんは、歯を抜くことに関して言えば母に全幅の信頼を寄せているのです。あたしをそんなに信頼しないで!とこちらが逃げ出したくなるほどの過度の信頼を。

何故でしょう。それは初めて彼女の歯が抜けた日の数年前に遡ります。

その日、母は仕事でした。休みだったお父さんとニャコさん。

ああ疲れたぜ、と仕事から帰ってくると、ドスドスとすごい勢いでニャコさんが玄関までお出迎え。

「おかーさーん!うあーーん」

苦笑いのお父さんが訳してくれたところによると...。

昼寝をしないニャコさんに愛想を尽かせて、というか横になった瞬間から眠れるのび太体質のお父さんは爆睡していた、と。ふと、泣き声で目を覚ますと、口から血を流しているニャコさんが傍らにおったそうな。ビビる父と子。

よく見ると、綺麗に生え揃っていたニャコさんの歯が一本なかったという。そして、下から「やっ!」と永久歯がちらりと顔をのぞかせていたのです。

ああ、乳歯が抜ける時期がやってきたのだな、と。そんな時期を考えたこともなかったお父さんと母は、その乳歯がぐらついていたことにも気づかず(おそらくニャコさんも気づいてなかったであろう)、当時三人でビビった次第でありました。

ニャコさん的には理解不能で後ろ暗い出来事だと思い部屋の片隅でお父さんに背中を向けて泣いていたようです。今思い出しても気の毒過ぎる...。寝てる場合かっ!

そこから怒濤のように歯がぐらつき始めたのです。

で、二本目の歯がぐらつき始めた時、明らかにぷらっぷらと本当にほぼ抜けていますよ、という状態にまでなった時。それでも流石にニャコさんは怖くて抜くことを躊躇していたのです(よくある面白いホームビデオのように)。

「じゃあ自分でもうちょっと動かしてみいや」

と、悪い顔で母はニャコさんにぷらついている歯をつまむように言いました。そして、ニャコさんがつまんだ瞬間、その肘を「ていっ」とはたきました。

から~ん...と勢いよく歯が飛んでいきました。........めでたしめでたし。

全然痛くもなく(だってほとんど抜けていたのだし)、血も出なくて(だってだって抜けてたよ、ほぼ)、ニャコさんは感激したようで、それから歯を抜くことに関しては母を尊敬の眼差しで見てくるようになったのです(あのやり方で?)。

複雑な気持ちの母。何故なら、基本的にはそんな面倒なことは全部お父さんにやってもらいたい。お父さん子になってもらったら母はとても楽。なのに、こんなことに...。

それからしばらく母は彼女の歯を抜く羽目になったのです。

「おとーさんは最初の時、ぐーぐー寝よった」

と、今でも恨み節のニャコさんはもう二度とお父さんに歯を触らせることはなかったのです.....。

 

で、紆余曲折を経て(お好み焼きを食べていたら抜けた、とか)今年の元旦を迎えたのです。

もうその頃には母の面倒臭がりと、抜けそうで抜けない苛立ちがピークを迎えていたニャコさんのフィーリング(おかーさんはもう何もしてくれない)が合致していたのです。

ニャコさんが遠く一点を見つめて立ったままずっと歯を動かしている姿をぼんやりと母は眺めておりました。その孤高の背中はまるで静かに敵を待ち構えるファイターのよう(小1だけど)。

どれほどの時間が経ったでしょう。半分飽きていた母がテレビに夢中になっていた頃合いにニャコさんが厳かに言いました。

「...取れた」

「!」

何だろう、この職人感は......。

よくテレビでやってるオモシロ動画みたいなので歯に糸をつけてドアノブにくくりつけてワーワー言ってる(伏兵の弟がおもちゃの刀でその糸を切る的な)やつとは一線を画したこの静かな抜歯はなんじゃらほい。

静かにティッシュを噛むニャコさん。そして静かに歯を見せるニャコさん。しみじみと見る母。ガーガー寝ているお父さん(また寝てる!)。

でもここからがお父さんの出番です。

「オラ~!!起きろ~!!外に行くぞ~!!」

と、番長ばりにお父さんを叩き起こしてニャコさんは外に歯を投げに出ていきました。

庭からはまじないの声が朗々と響いてきておりました。

 

そんなわけでニャコさんは一つ勉強になったことでしょう。

『誰も当てには出来ぬ、信じるのは己だけ』

.....歯が抜けるって奥深いですね。

その数日後には、またぐらついていた歯を一人で抜いたニャコさんでした。

どうなんですかね、これって普通ですかね、先生。

書いていてちょっと不安になった母です....。 

極寒

...寒い。

水道管が破裂する恐れが、とニュースで言っていたので昨夜必死に外にある水道にタオルを巻いたお父さんと母です。

何とか無事に水が使える本日に感謝です。でも明日はもっと寒いようなので今夜も水をチョロチョロ出す、というこのモッタイナイ感じを味わわねばならず、精神的に辛い母です。

さて、先生に連絡する力が残っておらず、前回からひと月以上ご無沙汰しておりました。十二月は仕事が忙しくなることは分かっていたので十一月から大掃除を地味に続けておりました。ちょっとずつちょっとずつ......誰にも気づかれないながらも自分の中ではやったったで~感は凄いものがありました。

とはいっても自分一人で全部やるのは嫌なのでお父さんとニャコさん用に掃除場所を残してはいました。大事ですね、皆でやったで~感を共用するのは。年末に皆で掃除している間も母は「ここもやった!あそこもやった!」としつこくアピールを忘れませんでした。

そんな中、ニャコさんがフローリングを雑巾で拭いてくれる、と言うので任せたところ、慎重派の彼女から確認が入りました。

「ねえおかーさん。雑巾ってよ、IKKOさんがけでいいでね?」

「!!!!!(ぐはっ!)」

本人は至って真面目な様子で、しゃがんだ状態で雑巾に両手を置いて尻をクイッと上げて母の答えを待っています。

どう見てもその姿は一休さん!!!

「あんたの耳が心配やわ!!!」

爆笑しながらツッコんだ母でした。聞きかじりが過ぎる......。

 

そんな感じでニャコさんは聞きかじった言葉をあらゆる場面で使い倒すのでマッハでツッコまねばならず、忙しいです。

ある日は、「今日は何か寒いわー」とかお父さんと話していたら、訳知ったる顔でやってきて、「そうそう、あっさり寒いでねー」と入ってくるニャコさん。

「......『うっすら』な!」

また別の日は、ニュースを観ていて画面に雪が降って屋根の先にできたものを見て、

「あ、うららや!」

と、嬉しそうなニャコさん。

「『つらら』!!!」

......リンダさんが踊る。

またまたある日は、読んだ本の内容を母に説明しようとして、

「なんかぁ、おかーさんがおらんかってー、別のおかーさんとこどもがー、別のこどものおとーさんと結婚してー.......えっとー、囲碁兄弟でー」

「『異母兄弟』!!」

その歳でなかなかハードな本を読んでるな!

 

「ねぇおかーさん。今度テレビである『の谷のナウシカ』録っていい?」

「おいっ、怒るでしかし!(眼鏡をクイッと上げて) 急にグレードダウンしとるやないけ! 『風の谷のナウシカ』じゃいっ。どこの池にオウムが来る!?」

 

「おとーさん、自転車どこで買うが? あ、リサイタルで買うが? あ、違った。リサイクルやったっけ? あ、リサイタルやったらジャイアンやわ! あははははは(^o^)」

あはははははじゃないっ! どれも間違っとるわ!

怖い、怖いよ母は。どうしてそんなに確信を持って言えるのだい?

 

........こんな風にニャコさんの脳内回路は混線中(それも微妙な感じで)です。

 

では、今年もよろしくお願いします m(_ _)m 

乱闘

先日、しみじみとニャコさんが言いました。

「今日よー、五年生の番長が来てよー」

「また古風な小学校やな。タイマンでも張ろうって?」

....絶対言い間違ってるよな君、と母は思いつつ。

後日、学校から帰ってきたニャコさんが照れた様子で、「この前のバンチョウよー、班長やったわー(テヘペロ)」

......そうだと思っていたよ、母は。

 

またしてもしみじみとある日のニャコさん。

「給食の時に放送があるがやけどよ。『全国のみなさん』って言うがやけどよー。何でやろー」

「すごいな、全国区の放送か。田舎の小学校から全国民に配信か(半笑い)」

.....相変わらず自由な耳をお持ちで。

「『全校』な」

「え!?」

と、ニャコさんの動きが止まりました。頭の中のコンピュータ回路がフル回転しているようでした。

また世界が広がったようで何よりです。