転倒

いつもそうなのですが、大体母の仕事がたて込み、なかなかすぐに帰れない状態の時にニャコさんは学校帰りに転ぶのです。

 先日もそうでした。それでも、母があと少しで家に辿り着く、という時に電話が掛かってきたのです(それだけでもマシだったということでしょうか)。

「おかーさん....またこけた。メガネも壊れた...」

メガネが壊れるほどの転びっぷりよ...。前回もそうだったよな、と遠い目になる母。

家に辿り着いて中に入ると、額、手、膝とでっかい絆創膏を貼ったニャコさんがお出迎え。ズボンの膝はビリビリになり、血だらけ...。恐ろしい。

本人は至ってお元気そうなのでひと安心。一人で消毒をし(本人曰く、「お茶で洗い流したー」)、的確に絆創膏を貼っているあたり、手慣れた感が漂います。母の出番は特になし、です。

今からメガネ屋に行けるかしらと調べると、行きつけのメガネ屋さんはお休み、というなんとかの法則の如くどうにもならない感じ。

メガネにヒビの入った漫画みたいな姿のニャコさん。おまけに、座るということを忘れたのか、ズボンをたくしあげたままウロウロと部屋を歩き回っています。

「とりあえず座ったら?」

と言うも、ウロウロが止まらない。テンション高めにウロつくばかり(本人曰く、「久しぶりにこけたきショックながよ...」)。

メガネ屋さんに行けないと分かった瞬間から母はもう諦めているので夕飯の準備です。

一体どういう風にこけたらそんな傷を負うのか、と聞くと、

「あそこのカメラ屋の前の坂を走って下りてきたら足がつんってなってこうこけたがよー」

と、見事な下向き大の字っぽく再現。

「殺人現場みたいな感じになってよー」

と、ちょっと面白い例えをするニャコさんにちょっと笑う母。

「あーちゃん(仮名)は泣くし、いっくん(仮名)は血にビビって『うおーっ』ってずっと叫びゆうし....男ってやっぱり血に弱いでねー」

と、謎のドヤ感。

「...あんたはどこから目線でそれを言いゆうがよ」

一緒に帰っている友達にすごい姿(アスファルトに額からダイブするという)を晒しておいてどの口が言っているのか...。

恐ろしい現場を目撃させられたお友達に深い同情と申し訳なさでいっぱいの母でした。

とりあえず母にできることは、もし道端で転んで大ケガをしている子供がいたら助けられるようにしておくことだな、と思いました。心の余裕と、絆創膏を持つことだな、と。大ケガをしている大人は「即救急車」だけれども。

次の日、帰ってきたニャコさんは興奮気味に言いました。

「児童クラブに行ったらよー、昨日のことを知らんはずの友達らあも『ニャコちゃん大丈夫ー?』って聞いてきてよー」

一体昨日はどれほどの大惨事だったのでしょうか...。

放課後児童クラブでは既に周知の事実だったようです。先にクラブに行っていたあーちゃんといっくんが報告してくれていたようで(それほどの衝撃を与えてすまぬ)。

 

そうこうしているうちにメガネも直り、絆創膏だけはまだまだ取れませんが元気に過ごしているニャコさんです。

どうか、どうか、すっ転ばないように生きてください、と願うばかりの母です。