激怒
昨日からニャコさんはお父さんと新たに整えられた二階の一室で寝ることになりました。
母は諸手を挙げて送り出し(それはそれはいそいそと布団を運び、加湿器も設置←ウキウキが止まらない)、一階で一人寝を満喫しました。
お父さんも自分の部屋から出張してのニャコさんとの同部屋です。かつて、こんなことがあったでしょうか(いや、ない)。
夜中にトイレに起こされついていく、布団を蹴飛ばしてはいないだろうかと夜中に何度か確認する、挙げ句の果てには、死んではいないだろうかと確認する....なんてことお父さんは二階で寝てるからしたことないでしょうよ(決してディスっているわけでは...)。さあ、これからはその役目をあなたが背負うのです!あっはははははは!(高笑いも出るというもの)
それでも、ふと夜中に何度か目を覚ました母は「あの人眠れているのかしら.....」とニャコさんに思いを馳せたものでした(お父さんの心配は一ミリもナッシング)。
それが証拠に、寝ていると肩をグイと掴まれ「おかーさんっ」と揺すられた夢を見たりなんかもして...。もちろん、実際は誰も肩なんか掴んでなくて。
ちょっと怖くてお経を唱えたりなんかして(心配している割りにはお化け扱い)。
それでも一人寝は最高だわ!と思ったのでした。
何故こんな展開になったかというと...。
始まりは昨日の朝でした。ニャコさんはここのところずっと不満だったのです。勉強机にモノが溢れて片付けても片付けても勉強するところがない!と。ニャコさんの勉強机の用途は「絵を描く」です。宿題はリビングの机とかでやっているので問題なし(いや、逆だと思う)。
まあニャコさんの勉強机は母が大人になってから買ったオシャレ机(なんの収納もついていないような、でも広いみたいな)で、傍らに三段ボックス的なものを配置しているものなので、収納力に限界が近づいていることは明らかでした。
で、勉強机の拡張計画がお父さんと母の間で話し合われたのです。
この机に合う棚を探しに行こう!でも待って。棚を設置したらこの部屋は狭くなるよ?どうするよ?
となって、誰かがこの部屋を出て行くしかないじゃないか?となったのです。
以前ご報告したように(『恐怖』参照願います)、庭に面したうっすい壁の和室に、勉強机→母→ニャコさんと並んでいるのでこちらも部屋としての限界が来ているのです。
ちょっと転がればニャコさんのキャスター付き椅子に巻き込まれる母なのです。
母が二階に上がれば解決するのです、単純に考えれば(二階には母が以前使っていたベッドもあるし!)。この和室をニャコさん部屋にしたらいいのですから。
が、それはニャコさんが許さない。一人で一階で寝れるか!ってなもんである。
「おかーさんはわたしを守るためにここで寝ゆうがやないが!?私が襲われたらどうするが!?」
と、難癖をつけてくるのです(それはそれはもう必死)。
......守るために一緒に寝ているわけではない、あなたが一人で寝れんというから居るだけである。そもそも襲われるような事態に陥ったとき、多分母もどうにかなっていると思うし...。と、あーでもないこーでもないと攻防があった末、お父さんに白羽の矢が立ったのです(遅いよ)。
「お父さんと一緒に寝たらいいじゃん!勉強は一階でして。寝るときは二階に上がって。ね、お父さん!(有無は言わせぬ!)」
お父さんには断る力がなかった...。そして、勉強机を二階に持っていく力もなかった...。
で、二階の空き部屋を整え、棚を探す旅に出たお父さんと母。
ニャコさんは鼻歌ものでお留守番。一人で寝る恐怖から解き放たれたのでご機嫌です。ついでに勉強机も素敵になりそうだから興奮を隠せません。出掛けている間、何回ケータイに電話があったことか...。
「すごい机の上綺麗にしゆうきね。すぐに動かせるようにしちょったらいい?あはははは~」
このまま天に舞い上がるんじゃないかしら、と思えるほどの浮かれっぷり。
そんな浮かれとんちきを聞き流しながらお父さんと母は家具屋からホームセンターまで何軒理想の棚を求めてさ迷ったことでしょう。
一度お昼ご飯を食べに帰ってきてからのまた出掛ける、というハードスケジュール。
理想の棚の何と難しいことよ...。帯に短し襷に長し、ということわざが母の頭を駆け巡ります。
これとこれを組み合わせて...とやっと二人が納得できる棚が見つかりました。
長く重い段ボールをヒィヒィ言いながら車に積み、残念ながら組み立てねばならぬなぁ、今日の話にはならないなぁと言いながら帰っていると、またしてもニャコさんからの電話。
「遅いがやけど...。今どこにおるがー?」
おーまーえー!!小姑か!お前の為に頑張っとるんじゃ!
もう帰っている、と言うと、
「あと何分?え?二十分?じゃあ帰ってきたら棚できるね♥️」
おーまーえー!!鬼か!!こちとら一日仕事で疲れとるんじゃ!キー!!(心の中でビンタ)
親の心子知らず(ちょっと違うかしら)
そんなわけで、帰ってきたものの早く組み立ててほしいニャコさんとお父さんとの間で一悶着ありましたが、昨日は段ボールを和室に運び込んだだけで終わりました。
で、その後寝る時間がやってきました。母のお楽しみの時間です。前日まで、ニャコさんの睡眠の妨げになってはいけないと、彼女が布団に入った瞬間から電気を消し、テレビの音も消し、暗闇で息をひそめて生きてきた母にとって奇跡的な夜の始まりだったのです!
今まではテレビの音を消していたから必然的に字幕が出るドラマ(ほぼ外国もの)しか観れていなかったのだけれども、電気を煌々と点け音も大きく出して観ましたよ、録画しておいた金曜ロードショー『パラサイト~半地下の家』!
夜何もかも全開で観る映画としてのこれは素晴らしく良かった!最初っから最後まで一気に観れる喜びよ(灯火管制下では母にとっては一時間が限界である)。
るらららら~♪となりながら床についたのです。これで私は自由の身~♪と。
だがしかし!
こんな浮かれとんちきを神様は許してくれなかったようで。
今朝。
ニャコさんはいつもの起床時刻より三十分以上も早く起きてきたのですが、「おはよう」と言う間も無く彼女の怒りに満ちた表情が母を絶望の淵に追いやり始めたのです(あぁぁぁ、もしや)。
「うるさいがよ!!!!おとーさんのイビキが!!!一睡も出来んかった!何あれ!ずーーーっとガーガー言うてよ!早く六時にならんろうかとずーっと時計見よった!羊も数えてみたけど、全然寝れんかった!腹立つ!」
激ギレです。
寝不足でテンション上がったままだから口も滑らかに次から次へとお父さんのイビキのあれこれを糾弾するニャコさんに同情を禁じ得ない母。
(母は知っていたよ...。あのイビキの五月蝿さは発狂ものだということは...)
でもでも、ニャコさんなら気にならないだろう思っていたんだよ(子供だからさ)。
いびきがうるさいってあなたも常日頃から言ってたじゃん?、てへへ。
それを引っ括めての納得だと思っていたのだが...。
駄目だったんだね、やっぱり。...っていうか、夜中に母の肩を掴んだのは強ちお化けではなかったというわけでもなかったんだね(きっとあれはニャコさんの生き霊!!)
「おかーさん、戻ってきていい?」
「やだ、無理。棚が置けんなる」
「大丈夫」
「んなわけあるか」
「私は二度とおとーさんと寝ん」
「一人で寝たら?」
「おかーさんが好きやき戻りたい」(←駄メンズか)
「一泊千円」
「え、100円じゃダメ?」
........お金を払ってでも戻りたがるニャコさん。必死です。いやいや母もたった一日の自由じゃ嫌過ぎる。
さて、今夜はどうなるでしょうか。
答えの出ぬままニャコさんは渋々と登校していきました。お父さんはノーダメージです。
「えっ、寝れんかったが?」
...だそうです。