恐怖(つづき)

そんなわけで、警察を呼んだんでのですが...。

「庭先に誰か居るんですけどぉ!男で...年齢?(目ぇつぶって足踏みしてるだけだからわかるわけねぇだろっ)さあ...三十代か四十代か...。怖いので中で待ってます!」みたいな会話をしてからどれくらいたったでしょう。

玄関辺りの廊下で寒い思いをしながら待てど暮らせど、パトカーは来ない!来ないったら来ない!

この間に犯人(←もうゾンビ説は消えている)が押し入ってきたら死ぬしかないやん、と母はプリプリ怒りながら仁王立ち。

(なんだ?、包丁でも持って待機してるほうがいいのか?棒か?木刀の方がいいのか?)

戦う気満々の母(「いかん!過剰防衛になるき杖が良い!」と同僚らのアドバイス←これまたやる気満々...)でしたが、いかんせん警察が遅いからこんなことで悩んでいるのです。

...そっか、ここは田舎だったな、と改めて実感。スーパーもコンビニもあるけど、バスで言えばの終点の辺り。

お父さんと、寝ているニャコさんの側に行き、「来んわ...包丁でも持った方がいいかな?」と弱気になり始めた母の耳に恐ろしい音が聞こえ始めたのです。

じょんじょろじょんじょろじょんじょろじょんじょろじょんじょろじょんじょろじょんじょろ~~~

ニャコさんが寝ている頭元の雨戸(鉄製)に軽快な、それでいて不快な音が響きます。もうお分かりですね、先生。

.........殺す。ぜってぇ殺す!許すまじ!!(はっ、育ちの悪さが出ちゃった)

泥棒め、おしっこしとるんですよ!

お父さんと思わず顔を見合わせちゃったですよ。

...これは、泥棒なのか?

 

そんなこんなでゆったりとパトカーが到着。

通報してから庭を見る勇気がなかったけれども、おしっこして逃げていくには十分な時間が経過しておりました(...と言っても二十分くらいだったのでしょうか。体感時間は一時間くらいでしたが)。

お巡りさんが来たらこっちのもんだとばかりに玄関から飛び出していき、「ここに居たんすよ!」と興奮気味に家の奥まった庭に母はお巡りさんらを連れて行ったのですが...。

何と、まだ泥棒(?)はそこに居たのです!室外機に腰を下ろしてぼんやりと天を仰いでいたのです!

「あ、おる」

またまた母は見たままを告げるしかありませんでした。

「!」

お巡りさんらにも緊張が走ります。先頭を切って案内していた母はササーっとお巡りさんとバトンタッチ。木々をかき分け(こんな時に限って伸び放題の庭木にカラまれる)、家に逃げ込む母。泥棒(?)に顔を見られてはならぬ!と必死です。

....で、しばらくしてお巡りさんに呼ばれ玄関から怖々顔を出すと、泥棒(?)は連行されパトカーに乗せられているところでした。.....フラフラと。

「家はどこ?」とお巡りさん。

「むにゃむにゃむにゃ」←うちからもう一つ通りが上の住所をむにゃつきながら話す泥棒(?)。

「酔っぱらってますんでこのまま送っていきます。それでいいですか?」と、お巡りさんに問われ、「いいです」としか言えなかった母とお父さん(不法侵入じゃないのかしら?)

あいつ、酔っぱらいだったんだな。家を間違えて入ってきて玄関は開かないし、どの窓も開かないし、どうしたんだとばかりに家の周りを徘徊してガタガタいわせてたんだな.....。で、行き止まって酔った頭で呆然としておったんだな。

ただの酔っぱらい...。今思い出してもふつふつと怒りが。

真夜中だし、寒いし、もう後は寝るしかなかったけど...寝れるか!と一人ノリツッコミしながら布団に入ったことでした。

そして朝、母は悪態をつきながら庭に出て、まだ濡れたまんまの雨戸に水をぶっかけまくって洗いまくったのでした。

(じょんじょろ、許すまじ!!)

 

...という話を当時、職場に出勤してきた全員に一人一人我が家の図面を描いて説明しまくった母でした。

だもんで、猫と幽霊と人はどれがマシか、となった時に同僚らは押し黙ったのです。

で、絶対に人間が怖いに決まっとる!と母は宣言したのでした。

 

そして、ガタガタから始まって、じょんじょじょろからのパトカーで、あれだけの騒ぎの中一度も目を覚まさず眠り続けたニャコさんがある意味怖い、と思う母なのでした。